時効の中断(更新)とは、法律で決められた一定の事由が生じると、それまでの時効期間が効力を失い、ゼロから時効期間のカウントがスタートすることです。

これと、似たような制度に時効の停止(完成猶予)があります。こちらは、一定の事由が生じると今まで進行してきた時効期間を一旦ストップして一時的に時効の完成が阻止される制度です。

時効の中断事由

法律で定められた時効の中断事由は以下のようなものがあります。

  • 裁判上の請求
  • 支払督促
  • 催告
  • 和解及び調停の申立て
  • 強制執行
  • 破産手続参加、再生手続参加、更生手続参加
  • 協議を行う旨の合意
  • 債務の承認
  • 担保権の実行、担保権の実行としての競売など

消滅時効の中断とは

旧民法の場合(令和2年4月1日以前に成立した債権)、貸金業者との間の借金は商事債権として「5年」で時効が成立します。基本的には最後に返済した時から5年で消滅時効にかかります。

ただし、最後の返済から5年が経過しているからといって絶対に時効が成立しているかというと、そうとも限りません。その理由は、時効には中断事由というものが存在するからです。中断事由が生じると、進行中の時効はゼロからリセットされてしまいます。

よって、時効の中断事由が生じると時効が成立することはありません。これは債権者保護の観点から設けられている制度です。

たとえば、貸金業者からの借金が最後の返済から4年と11ヶ月経過しており、あと1ヶ月で時効が完成するという場面で、借主が貸主に対して借金があることを認める(債務の承認をする)と、今までの4年11ヶ月は全てリセットされ、新たにゼロから時効期間がスタートします。

よくある時効の中断事由としては、「債務の承認」や、「裁判上の請求」、「支払督促」などがあります。

そのため、債権者が業者の場合、時効が完成しないように、時効完成前になんらかの対処をしてくるのが通常です。

ポイント①

時効の中断事由が生じると、時効はゼロからスタートする!!

請求による時効中断(裁判上の時効中断)

時効中断事由の代表的なものとして債権者からの請求による中断があります。債権者からの請求があった場合、どんな請求でも時効を中断させるわけではなく、消滅時効を中断させるには、裁判上の請求である必要があります。

裁判上の請求というのは、訴訟支払督促のことです。突如、裁判所から訴状や支払督促が届いたら時効の中断事由が生じているということです。

そのため、ただ債権者から電話で請求されただけの場合や、催告書などが郵送されてきた場合に過ぎない場合は、消滅時効は中断しませんので、最後の支払いから5年経てば時効消滅します。

ポイント②

ただ単に電話や催告書で請求されただけなら時効は中断しない!!

債務の承認による時効中断

時効の中断事由の中で最も多いのが「債務の承認」によるものです。これは、借主も知らず知らずの間に、債務の承認が生じてしまう可能性があるのが注意点です。

よくあるのが、「支払い猶予のお願い」「債務の一部弁済」です。債務の承認というのは、言い換えると、借金があることを認めるという行為です。

たとえば、債権者から督促の電話があり、しぶしぶ借金の一部を弁済してしまった場合、時効の中断は借金の全額に及びます。50万円の借金に対して、たとえ5,000円でも払ってしまえば一部弁済として、債務の承認にあたります。

また、債権者にからの請求に対して、支払いの延期を求めたりすると、債務の承認として時効中断事由にあたる可能性が高いです。

ポイント③

一部弁済した場合や、支払いの猶予をお願いしただけでも債務の承認に該当する!!

時効中断のまとめ

以上、借金問題でよくある中断事由を取り上げました。実際には、他にも以下のような中断事由があります。

  • 和解及び調停の申立て
  • 破産手続参加、再生手続参加、更生手続参加
  • 強制執行
  • 差押え、仮差押、仮処分
  • 担保権の実行、担保権の実行としての競売
  • 財産開示手続または第三者からの情報取得手続き
  • 協議を行う旨の合意

などなど、色々とあるわけですが、文字だけ見ると何のことか非常に分かりづらいですね。ただ、借金問題の時効中断としては、裁判上の請求(訴訟と支払督促)と、債務の承認だけを覚えておけばとりあえずは大丈夫です。

時効が完成していると思っていたら、実は債務の承認をしていたり、債権者は5年が経つギリギリのところで支払督促を送ったりして時効の完成を阻止しようとしますので、ご自身の借金が時効になっているかどうか今一度、考えてみてください。

不安な方は、債務整理の専門家に相談して消滅時効が完成しているかどうか判断してもらうといいです。

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