財産の差し押さえの手段として最も手軽に利用されるのが給与の差し押さえです。今回は給与の差し押さえについて解説していきます。
給料差し押さえのルール
まず大前提として、突然給与の差し押さえがあったとしても、いきなり給与全部を受け取れなくなってしまうことはありません。
差し押さえられる上限額は給料の4分の1
給料は個人の労働の対価として会社に対して請求できる権利です。個人の財産として扱われるので差し押さえの対象となります。しかし、すべてを差し押さえられてしまったら生活をしていくにも困ります。給料は生活していくのに必要なものですので、銀行の預金など他の財産とは違い全額を差し押さえられてしまうことはありません。
法律上、給料の4分の3の金額までは受け取ることができるようになっています。ですので、実際に差し押さえの対象となる給料は4分の1だけになります。この差し押さえは借金の返済が終わるまで、毎月継続して続いていきます。
給料中の手取り33万円以上の部分は全て差し押さえ
給料の差し押さえというのは、生活に必要とされる金額は差し押さえないという観点から、上記のように給料の4分の3の部分は差し押さえの対象になりません。しかし、手取りで33万円を超える部分については、全額が差し押さえの対象になってしまいます。これは4分の1を超えている部分でも全額が対象となります。
給料だけじゃなくボーナスも対象
差し押さえの対象は給料だけでなく、ボーナスや退職金も、給料と同じよう対象になります。ボーナスや退職金も給料と同じように労働の対価として支払われるものだからです。差し押さえの割合は、給料のときと同じ計算方法となります。
給料差し押さえの豆知識
差し押さえ後の流れ
給料の差し押さえと言っても、実際にここまでいくには多くの過程を辿っています。借金が返せなくなって滞納したとしても、いきなり給料が差し押さえられるわけではありません。滞納が続くと、まずは自宅に債権者から督促状が届きます。そのまま無視して放置し続けると一括で支払うように請求書が届きます。
それでも放置すると、裁判を起こされてしまいます。裁判で相手の主張が全て認められると、債権者は裁判所に差し押さえの申し立てをして最終的には給料が差し押さえになります。つまり、裁判までいかない限りは差し押さえに発展することはありません。
差し押さえることができる財産は色々ありますが、サラリーマンの方はまずば給料が差し押さえられます。給料の差し押さえまでいくと会社にも通知がいくので会社に借金滞納の事実がバレてしまいます。
また、給料は差し押さえの分が引かれての支給となりますので、給料の明細を家族の方が見るようなことがあればその際に手取りが減っていることがバレてしまいます。
税金の滞納は裁判なしで差し押さえになる
上記の流れは、消費者金融などの貸金業者から借金をして、その返済を滞納したときの話です。そうではなく、税金を滞納した場合は少し手続きの流れが異なります。
通常の借金の滞納であれば、裁判をして請求が認められた上で差し押さえの段階に入ります。しかし、税金を滞納している場合は、裁判を起こさなくても差し押さえをすることができてしまいます。これを滞納処分による差し押さえといいます。
滞納があったときに自宅に督促状が届くのは同じですが、その発行から10日が経過しても税金が完納されていなければ、給料や銀行預金などの財産を差し押さえることができるようになります。
給料の差し押さえを回避する方法
給料が実際に差し押さえられてから、何とかするのはかなり大変です。そのような状態になる前にできるだけ早い段階で事前に回避するように対策をとるべきです。
債権者と話し合いをする
債権者は貸したお金が払ってもらえないから差し押さえ等の強制手段をとるわけです。滞納があっても返済する意思があるのであれば、まずは債権者と連絡をとってしっかりと話し合いをしましょう。
借金は放置しても何もいいことはなく、どんどん利息も膨らみ最後は全部自分に責任が返ってきます。ですので、なるべく早期に話し合いをして今後の返済プランを立てていくことが重要です。
話し合いの結果、利息をカットしてもらい、返済のやり方を分割払いにしてもらうような交渉を「任意整理」といいます。任意整理は債務整理の一種ですが、裁判所を通すことなく当事者同士の話し合いで解決を目指す方法です。
一般の方が、交渉をしても知識と経験の差から債権者にうまく説明できず、話がまとまらないことも多いです。少しでも確実に早期に分割払いや利息のカットを認めてもらうには、借金の専門家に代わりに交渉してもらうのがお勧めです。
税金をの滞納は、役所と相談する
税金の滞納の場合は、業者ではなく役所が管轄です。ですので、なるべく早期に役所にいって相談してみてください。役所の場合は、交渉はできませんが、税金が払えない時の救済措置を取ることができる可能性があります。相談の結果、納付期限の猶予をしてもらうことができたり、分割での支払いを認めてもらえたりすることがあります。
相談する時は手ぶらでいくのではなく、現在の収入や借金が分かるもの、通帳、返済状況など、今現在の生活状況や今後の見通しなどが説明できる資料を持っていくと話がまとまりやすいです。
債務整理をする
給料の差し押さえなどの強制執行を避けるためには債務整理(借金整理)の手段が最も効果的です。
債務整理にはもちろんデメリットもあるので一概にこれが1番いいとは言えませんが、主に「任意整理」「個人再生」「自己破産」などの種類があります。
任意整理は裁判所を通さずに債権者と交渉して利息をカットしてもらい、元本を原則3年間で分割して返済していく方法です。個人再生は、裁判所の手続きにより元本を大幅に減額してもらい、それを3〜5年くらいで返済していく方法です。自己破産は、借金の返済が不可能であることを裁判所に認めてもらい、返済についての免責許可をもらうことで借金の返済義務を免除してもらう方法です。
このうちの、自己破産以外の方法は、約束した内容の支払いを続けている間は差し押さえを受けることはありません。もちろん、これも返済を滞納してしまえば一括返済を求められ、最終的には裁判になる可能性はあります。
滞納しているのが民間からの借金ではなく、税金の場合は、これらの債務整理の手続きはできませんのでご注意ください。税金からは逃れることができないようになっているので、税金は滞納しないようにすることが大事です。
まとめ
- 給料の差し押さえは基本的には4分の1まで
- 手取り33万円を超える部分については差し押さえを受ける
- 返済は期日から遅れた時点で滞納扱いになる
- 返済期限が決まってないものは、債権者から請求された時点が返済期限となる
- 家族にも郵便物や給与明細で差し押さえを知られる可能性がある
- 職場には給料の差し押さえの通知でバレてしまう
- 差し押さえを事前回避するには早期に債権者と交渉する
- 税金の滞納の場合は役所に相談に行く
- 返済が難しいと判断したら債務整理の手続きをとる
- 税金の滞納は債務整理が出来ないので注意
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記事監修者
ローワン綜合法務事務所の司法書士 中瀬雄太です。
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